2000年7月7日
前職が殆ど休みとれない仕事に就いていた事もあって、ツーリングを始めるまでは、道内に住んでいながら道央圏以外の場所には行ったことがなかった。
ましてや、道東方面は完全な未知の世界であり、十勝平野に足を踏み入れるのも今回が初めての経験だ。
7月7日、早朝スッキリしない空模様の中、自宅を出発し苫小牧から国道235号線を通り、厚真、鵡川、富川と海岸線沿いをひたすら走った。
富川からR237を平取、日高と走り道の駅「樹海ロード日高」で休憩を取った。ここまでは1998年の富良野ツーリングでも通った道だ。
ここから日勝峠を越えるのだが、自分にとっては全くの未開の地となる。峠の頂上を過ぎ十勝側の下りの途中までは生憎雲がかかっていたので、峠の景観を楽しむこともできなったが、中腹ころから雲が開け、大きなカーブを描く道と十勝平野が見えてきた。
今となっては、何のことはない眺めなのだが、この時はちょっと感動したものだ。
あまりスッキリしない空の下を、清水、美蔓峠(びまんとうげ)と過ぎ、鹿追のパーキングでちょっと休憩。この時は鹿追のパーキングもまだ道の駅となっていなかった。
ちょっと早いが、途中GSのおじさんに教えてもらった鹿追の「海老金」と言うすし屋さんで昼食を取ることにした。
板前の若い兄さんが話しかけてきた、本人もバイクが好きでFZに乗っているらしく、暫くバイクの話で盛り上がり、すっかり気を良くしてコーヒーをサービスしてくれた。
食事を終え、瓜幕を過ぎ、今日の目的地然別野営場へ向かう。
北瓜幕までで舗装道路は終わり、ここから先のキャンプ場まの約15kmはダートが続く(現在は完全に舗装になっている)。
キャンプ場に近づくにつれてつづら折れのきつく、深い砂利のダートになっており、ロードバイクでは本当にしんどい。「無事につけるだろうか?」と不安になりながら、なんとか目的地に到着した。
然別野営場
大雪国立公園内の周囲は深い山の中にあるキャンプ場だ。
サイト内は松林の林間サイトで、所どころテントサイトには土が出ているが、針葉樹の落葉が深く、ふっくらとした地面だった。
ファミリーキャンプが多かったが、ライダーも何人かキャンプをしていた。
その夜、ライダー同志が集まって談笑していたが、気心知れた同志のようで、私は仲間に入っていく勇気が持てず、一人ひっそりとキャンプをしていた。
菅野温泉
野営場のすぐ近くに秘湯として人気の高い菅野温泉がある。(現在は閉館)
ここの入湯も今回のツーリングの目的の一つだ。
テントを張り終え、さっそく温泉に入り行くが、ここで思わぬトラブルにあう。
キャンプ場のすぐ横の道を一本それれば菅野温泉があるのだが、やたら疲れていたせいか、道を間違って歩いてしまった。
「あれっ??」温泉が無い。「もうちょっと先だったかな?」、記憶力がマヒしてしまっている。どんどんと山道を進む、どれくらい歩いただろうか?どうやら然別湖の北側の山田に抜ける林道を歩いてしまったようだ。
いいかげん歩いてから、いま来た道を引き返し、時間を無駄にした後悔と疲れた体を引きずってやっとの思いで温泉にたどり着いた。
内風呂も混浴を含めいくつかあるが、入ったのは写真にある一つで後は露天風呂にした。
露天風呂も2つあり、どちらも混浴になってる。(別に混浴が目当てではないので、あしからず。。。)
外の脱衣所で服を脱いでいると、本州から来た初老の夫婦が入ってきた、奥さんの方も堂々と服を脱いで一緒に露天風呂を堪能している。
現在菅野温泉は2008年から閉館し、再開の見込みはなさそうだ。
写真は昨年(2011年)の10月、車で立ち寄った時に撮影したものだが、建屋は残っているが、すっかり荒れ果て、おまけにキャンプ場も9月末までなので、無人になっており、不気味さが漂っていた。
鹿の湯露天風呂
今回の目的のもう一つ、無料の鹿の湯露天風呂。
キャンプ場内を通り過ぎ、清流沿いに歩いて行くと、無料の露天風呂がある。
キャンパーも多く利用しているが、菅野温泉の宿泊客も次々と浴衣姿で入浴にきていた。
湯船の傍らに小さな屋根がかかった木製の脱衣スペースがあるだけで、他には何もない。
夜ともなると、ランタンを傍らに置いて入浴を楽しむ男女でいっぱいになった。
混浴といっても、ここは水着もOKなので着替えだけうまくやれば女性でも安心して入浴ができる。
2000年7月8日
千畳くずれ
翌、7月8日、早々にテントを撤収し、然別湖方向に向けて出発。
北瓜幕から然別湖に抜ける道道95号線、扇ヶ原展望台を過ぎ頂上の手前に「千畳くずれ」と言われる、スポットがあった。
崖の途中に大きな岩が石垣のように積み重なっているが、火山活動で流れ出た溶岩の塊がくずれごつごつとした岩となって広範囲に重なり合っているのだ。
後で知人に聞いた話だが、この場所ではよくナキウサギの姿が見られるそうだ。
「おっぱい山」
峠を越えるとすぐ然別湖が見えてきた、標高810m大雪国立公園内の唯一の自然湖だ。
しかし、紅葉シーズンならばきっと美しい景観がみられるのだろうが、7月ではこれといった感慨もなく通り過ぎてしまった。
然別から糠平へ抜ける湖岸道路は、急カーブが多く、見通しが悪く、道幅も車が交差するには狭すぎる位の道路が続く。
幌鹿峠を越え糠平源泉郷を過ぎ、国道273号線を三国峠に向かって走る。
幌加あたりだったろうか?ふと東方向をみると、あるものを想像させる形の山が2つ見えてきた。
北海道の「おっぱい山」と言われているそうだ。正式名は西クマネシリ岳(左)と南クマネシリ岳(右、ピリベツ岳ともいうかもしれない)。
三国峠
上川町と上士幌をむすぶ標高1,139mにある、北海道の中で自動車の通行が可能な峠では一番高いところにある峠だそうだ。
あいにくとスッキリした天候ではなかったが、頂上手前の松見大橋を通り、到着したときには感動した。
見渡す限りの緑の大樹海と、雲の上から山頂を覗かせている大雪の山々稜線。
しばし景色を眺めた後、層雲峡方面へ出発した。
三国峠を層雲峡方面へ降りてくると少し天候がよくなり、青空も見えてきた。
途中大雪湖の横を通るが、こちらは人造湖(ダム)と言う事もあって、期待したほどの景観はなかった。
長い長い層雲峡の銀河トンネルを車の排気ガスで気分が悪くなるのを耐えながら通り過ぎる。
旭川市街の手前道の駅とうまで休憩をし、さらに旭川ラーメン村でラーメンを食べ(店はどこだったか忘れた)、美瑛・富良野方面に向かった。
美瑛町から白金まで一気に駆け上がり、またまた天気のスッキリしない中を白金~吹上へ抜ける。
白銀荘で温泉
白金温泉街から望岳台、十勝岳温泉に抜ける966号線を通るが、今回もまた天気は悪く雲の中を走ってしまった。
途中、吹上にある保養センター白銀荘で温泉に浸かる。
露天風呂は広く、岩で囲われた湯船がいくつかあり、温度も高温と低温に分れている。
景観はそこそこなのだが、白銀荘の建屋と十勝岳が半分重なってしまうのがちょっと残念だ。
温泉から上がって、今日テントを張る予定の上富良野日の出公園キャンプ場めがけ、291号線を一気に下る。
上富良野町日の出公園キャンプ場
(現、上富良野日の出公園オートキャンプ場)
この当時2000年まではこのキャンプ場も無料であった。
オートキャンプ場が完成した翌年の2001年から有料になったと記憶している。
無料という事もあり、当時もライダーが多くキャンプをしていた。
鳥沼公園のような農家のアルバイトをしながら生活する長期滞在型のライダーはいないが、1~2週間くらいは滞在し、また次のキャンプ場に移動する、移動型のキャンパーは数人いた。
この時は、4人で道内を2カ月近く回っているグループと後さらに2人加わリ6人のライダーと仲良くなり、夜はバーベキューハウス(写真)で皆で食材と酒を持ち寄って宴会を楽しんだ。
ハーレーのエレクトラグライドに乗っていたリーダー格の方は土建屋さんか何かの社長らしく、女性1人を含む若い3人を引き連れて道内をのんびりツーリングしているようだ。
2000年7月9日
7月9日は朝から良く晴れ、気温がグングン上昇した。
知り合ったライダー達
グループの紅一点、愛称ユッコさんは料理が得意らしく、残っている野菜を使って手早くスープを作りみんなにふるまってくれた。
これがとても美味しかったのが記憶に残っている。
この当時、ここで会うライダー同志みな気軽に声をかけ、バーベキューハウスに集まって、見知らぬ同士が食糧を持ち寄り焼き肉をしながらバイク談義に盛り上がったものだ。
特に名前をきくわけでもなく、次に会う約束をする訳でもないが、また会う機会があれば同じように意気投合できる雰囲気があった。
お互いに通ってきたルートや気に行ったスポットの情報を交換し、次のツーリングの参考にした。
しかし、最近はどうだろう?私は相変わらず毎年このキャンプ場に2~3回はテントを張るが、大抵のライダーは人に干渉されず、せず、個を守ってバーベキューハウスに集まることもない。
駐輪場で声をかけて話をしたとしても、いっしょに飯を食べるところまでは行かない。
せいぜい自分のテントのそばで一緒に上陸してきた仲間とこぢんまりと食事をしている。そんな姿ばかりが目につくようになってしまった。
若いライダー人口が極端に少なくなったせいだろうか、それとも社会が複雑になり通り魔殺人、振り込め詐欺、IT化、など歪んだ社会構造変化からか、他人には無関心で個を守るために干渉を避けるのが当たり前になってしまったのだろうか?
年を重ねる度にその事を痛切に感じるようになってしまった。
せっかく晴れたのだが、この日は帰る日だ。
午前中にテントを撤収し、昼近くに上富良野をあとにした。
日の出公園のラベンダーも開花時期を迎え、公園の頂上付近では、早咲きの種が紫色の花をつけだしていた。
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